2021/02/10

第6回リグナイト『フェイシャルリグ ~リガーアニメーター座談会~』~議論結果~

こんにちは。
BACKBONEの福本です。

今回は、
第6回リグナイト『フェイシャルリグ ~リガーアニメーター座談会~』
の当日の様子をお伝えします。

リグナイトに関してはこちら。
リグナイト概要
第1回リグナイト『リガーアニメーター座談会その①』前編~議論結果~

第2回リグナイト『リガーアニメーター座談会その②』中編~議論結果~
第3回リグナイト『リガーアニメーター座談会その③』後編~議論結果~
第4回リグナイト『ゲームと映像のリグの違いその①』~議論結果~
第5回リグナイト『ゲームと映像のリグの違いその②』~議論結果~

 

今回も前回に引き続き、Zoomでのオンライン開催となりました。
ご参加いただきました会社様、リガーさん、アニメーターさんの数は下記となります。
海外からは、アニメーターさん2名、リガーさん1名にご参加いただきました。

  • 映像関連   : 14社
  • ゲーム関連  : 12社
  • フリーランス :  3名
  • 学生     :  3名
  • 計      : 26社 + 学生3
  • リガー    : 20
  • アニメーター : 15名
  • 計      : 35名

※以下の議論内容は、各テーマの「解」ではなく、皆さまの経験談に基づく「ご意見」となります。

 

前半 使いやすいフェイシャルリグ、クオリティについて

〘使いやすいと感じるフェイシャルリグはどのようなものですか?〙

<アニメーター>

  • 少ないコントローラーで多くの表情が付けられるリグ。
  • 軽いリグ。
  • 少ないコントローラーでブロッキングができるリグ。
  • 動いてほしいところにコントローラーがあり、思った通りの形に調整できるリグ。
  • ウェイトが汚いと複数のコントローラーを制御することになるので手間。
  • ウェイトが綺麗なリグ。
  • このコントローラーを動かすとこの表情が付けられる、と直感的に分かるリグ。
  • 少ないコントローラで60%位の表情が確立できればよい。

別ウィンドウでのGUIについて、特にご意見がなかったのが意外でした。

 

〘海外のフェイシャルリグについて教えてください。〙

<リガー(海外)>

<A社勤務>

  • 内製のDCCツールを使用している。
    ほぼリアルタイム(24fps)で動く。
    膨大な数のCPUを使用していてアイドルタイムに先読みでキャッシュするので超高速。
    ボディと顔は別で計算している。
    顔はローカルで計算している。
  • 昔はロウレゾのモデルを用いたテンションベースで、
    エッジにテンションをかける方法で制御していた。
    めちゃくちゃ重いので7~8年ほど前にジョイントベースに変更した。
  • 唇の口角などはSurface空間上で動くように設定している。
  • 表情筋が自然に動くように設定している。
  • コントローラーの数はかなり多い。
  • ブロッキングを簡単に作れるように、
    複数のコントローラーをまとめて制御できるコントローラーを設定している。
  • ポーズライブラリーを使用して特定の表情は簡単に作れるように設定している。
  • 最終段階の細かい表情は、
    2Vertex間隔ごとに制御できる細かいコントローラーを使用する。
    どのような形でも作れる。
  • ストレッチ&スクアッシュは別のCageで制御している。
  • 他のキャラにアニメーションを流用した際に、
    同じような表情が再現できるように設定している。
  • カートゥーン系の作品では誇張表現を多用する。
  • 想定外の制御をされても破綻しないように設定している。
  • メインのコントローラーは面のコントローラーで設定している。
    顔を描いていくようなイメージで調節ができる。
  • 内製のツールでは、1つのコントローラーに、
    複数の挙動の違うTranslation/Rotation/Scaleを割り当てることができる。
  • Translation/Rotation/Scaleのコントローラー以外に、頬のふくらみや唇のロール、
    上下の接着などもそれぞれに関連した位置にあるコントローラーに含めている。
  • コントローラーの数や位置は下図のような感じ。

    ※面:主要コントローラーの区分け。ドット:微調整用のコントローラーの位置。

 

<アニメーター(海外)>

<B社勤務>

  • 実写やVFX系の案件では、9割5分はターゲットベースのリグ。
  • 多くの会社で経験したが、ジョイントベースは殆どなかった。
  • スライダーで大まかに表情を調整できて表情筋が連動して動く仕組み。
  • 表情筋のベースターゲットで50-60個。
    細かいターゲットはキャラクターにもよるが、数百単位で設定されている。
    某映画では700個ほどのターゲットが設定されていた。
  • 細かく制御できるTweakerコントローラーも設定されている。
    Tweakerコントローラーもターゲットベースで設定されている。
  • ターゲットの精度はとてもよいがリグはめちゃくちゃ重い。
  • ディレクターからピクセル単位でのアニメーションの修正指示がでる。
    こういった細かい指示に対応できるよう細かくリグが設定されている。
  • フェイシャルキャプチャーはキーを全て削除して手付けで付け直す。
    モーションブラーがかかった際に、
    キーが干渉してノイズのような動きになるので結局は手付け。
  • ブレンドシェイプが主流だったが最近は少し変わり始めた。
  • 体に関してはほぼ全てのショットでショットスカルプトで調整する。
    顔に関してはショットスカルプトは使用しない。
    不足している表情がある場合は、
    リガーに希望を伝えてターゲットを追加していただく。
    結果、数百単位のターゲットが設定される。
  • 口にリップトゥゲザーまたはジッパー(唇の粘着)と呼ばれる機能が設定されている。
    よく使う。

 

<C社勤務>

  • ターゲットベースのリグ。
  • リグがめちゃくちゃ重い。
  • 目のコントローラーが何重にも設定されていて細かく調整できる。
    が、めちゃくちゃ重いのでポーズライブラリーを多用している。
    特殊な表情以外は一部のコントローラーしか使用していない。
    コントローラーが多すぎる。

環境も仕組みも何もかもが桁違いでした。
海外では、口のジッパー機能がかなりの頻度で使用されているようです。

 

〘ジョイントベースとターゲットベースどちらで設定していますか?〙

〈リガー(映像)〉

  • CMやTV関連の案件は制作期間が短いので、ターゲットベースで設定している。
    顎の開閉のみジョイントを設定している。
    ターゲットは得意な方が作成している。
    とにかく時間がないので全員で対応している。
    時間がないときはiClone(有料ツール)を使う場合もある。
  • ジョイントとターゲットのハイブリッドで設定している。
    映画などは開発期間が長いので少し余裕を持って設計できる。
  • アニメの案件はターゲットベースで設定することが多い。
    誇張表現が多いのでジョイントベースだと破綻する。
    おまけ程度に微調整用のジョイントを配置している。
  • セルルックの案件は筋肉があってないようなもの。
    ショットごとに必要なものは都度モデリングして追加している。
    トポロジーの共通化は運用が難しかったので行っていない。
    キャラクター毎にブレンドシェイプを用意している。
    社内にリガーよりもモデラーの方が多いので、
    人海戦術でターゲットを大量に作成して対応している。
  • ジョイントベースはツール化していれば便利だが、
    フルスクラッチでの開発が大変なのでターゲットベースで設定している。

 

〈リガー(ゲーム)〉

  • 社内のゲームエンジンの問題でジョイントベースで設定している。
    リガーとアニメーターがリグを兼任しているので、
    リグで手を抜くと自分に返ってくる。
    トポロジーを共通化してウェイトを流用している案件もある。
    全アセットで個別にウェイトを調整する案件も多い。
    リアルな表現や追加の表現が必要な場合は、
    ノーマルマップのブレンドなどシェーダー側で対応することがある。
    顔の骨の数は主要キャラで200本位。
    30fpsは出るように設定する。
    インゲームと映像で骨数を分けている。
  • ジョイントベースで設定している。
    顔の骨の数は100本位。
    舌にもコントローラーを設定している。
    自動リップシンクの際に舌が制御されるように設定されている。
    処理負荷の問題があるので、口内のエッジは減らしたい。

 

<アニメーター>

  • 動かしやすければジョイントベースでもターゲットベースでもどちらでもよい。
  • コントローラーはちょうど良いサイズにしてほしい。

映像はターゲットベース、ゲームはジョイントベースが多い印象でした。

 

この他にも、

  • UE4などのリアル系のフェイシャルの海外での反応や評価。
  • リガーとアニメーターのコンセンサスの取り方。
  • ジオメトリを直接ピックして制御できる面コントローラーの使用感。
  • フリーランスの方が使用されているフェイシャルリグ。
  • ターゲットの流用方法。
  • トポロジーの共通化。

など様々な議論が行われました。

 

休憩 『雑談』

在宅勤務や、在宅勤務下での新人の教育について雑談されていました。

 

後半 『フェイシャルリグに最低限求めること、
    必ず必要な機能、不要な機能について』

〘あると良い機能、もしくはあまり使用していない機能はありますか?〙

<アニメーター>

  • セルルックの案件では、口のジッパー機能はあまり使わない。
  • セルルックの案件では、顔の一部のパーツを動かしたり、大きくする機能は必須。
  • カートゥーン系の案件では、顔全体を曲げたりする機能は使用したが、
    セルルックの案件では不要だった。
  • 下瞼だけを動かすコントローラーがあると笑った感じの柔らかさを表現できる。
  • 頬の筋肉を制御できると、目の表情のサポートができるので表現力が格段に上がる。
  • セルルックの案件では、歯や舌の見え方を調整できるように設定してほしい。
    発音としては必要ないが見た目での位置調整は多い。
  • 舌よりも歯のスケールや位置を調整することが多いので、
    歯にもコントローラーが欲しい。
  • 案件によって必要な機能が違う。
  • 感情を表現できることが重要。
  • セルルックの案件では、リップシンクの際に顎がガクガクして見えるので、
    口が開閉していても顎が動いてほしくない場合がある。
  • 口は動かず顎だけが動くコントローラーが欲しい。
    海外の方からは「コントローラーは何に使うんだ?」と聞かれるが、
    アニメの案件特有の機能。
  • 海外の方は口内の動きもよく観察されているので、
    舌の厚みや巻き込みなどの機能が欲しい。
  • 海外の案件の場合は舌の動きについての指示が多い。

<アニメーター(海外)>

  • スクアッシュ機能は設定されている。
  • 部位的に大きさを変更できる機能も設定されている。
  • ブロッキングの時点で、カメラごとに顔や目の一部を大きくする、
    といったアニメーションも付ける。
  • コミカルな表情を付ける際は原型をとどめないほど動かすので、
    細かいコントローラーは必要。
  • 通常の表情では一部のコントローラーしか使用しない。
  • 外国語のリップシンクは舌の動きも重要。

<リガー(海外)>

  • 舌にもコントローラーを設定している。
  • 舌の巻き込みの制御もできる。

案件の特性によって必要な機能は異なるようです。
口内の処理も重要なので、
モデルチェックの際に口内のエッジの流れも気を付ける必要がありますね。

 

〘設定されていると思わずリガーを称賛してしまう機能はなんですか?〙

<アニメーター>

  • 上唇と下唇を内側に巻き込んだ形状が作れる機能。
  • 唇を噛んだり、頬を膨らますことができる機能が設定されていると、
    「お!リガーさん凄い!」と感じる。
  • 口を閉じた状態から、さらに顎のコントローラーを上に動かしても
    口の形状が破綻せずに追従する機能。
    セルルックの案件では、別のアプローチで対応すること多いので、
    使用頻度は低いが「おお!」と感じる。

ジョイントベースでは、唇を巻き込む処理は特に難しいです。

 

〘顔のコントローラーの軸の向きについてご意見はありますか?〙

<アニメーター>

  • 顔の表面に沿って一軸で動かせるような軸の向きが良い。
  • 意図しない軸に沿う時があって、結局は手で修正するのでワールド軸で良い。
  • アニメの案件では、
    カメラ毎に顔の輪郭や大きさを変えることが多いのでワールド軸がよい。
  • 作業者によって意見は分かれる。
  • 瞼は眼球に沿って動く軸が良い。
  • コントローラーを複数選択して同一の軸で動かせないなら全てワールド軸でも良い。
  • キャラクターのデザインやアニメーションの付け方によって変わる。

<リガー(映像)>

  • 表面に沿わせた軸でもワールド軸でもどちらでも設定できるが、
    作業者によって意見が分かれるので判断が難しい。
  • アニメーターさんからはワールド軸がよいとのご意見が多い。

<リガー(ゲーム)>

  • 表面に沿わせていたが、
    カメラビューで使用するのでワールド軸で制御したいとご意見があった。

<アニメーター(海外)>

  • サーフェイスに沿っていることが多い。
    ロックはかかっていないので好きに動かせる。
    ノーマル方向にも動かせる。
  • サーフェイスに沿っている方が動かしやすい。
  • サーフェイスに沿っているかは半々くらいの割合。

多数決を採ったところ、

沿わせる軸派:5割
ワールド軸派:5割

でした。

コントローラーに自由度があり過ぎても、
使用する方の力量によってクォリティの差やキャラ崩れが発生するので、
アニメーターさんにご相談しながら決めるのが良さそうです。

 

『フリータイム』

〘フェイシャルアニメーションはどのように付けていますか?〙

<アニメーター>

  • 使うコントローラーをある程度限定して先ずはザックリ付ける。
  • 感情の動き(喜怒哀楽)と機能的な動き(目パチ、リップシンク)を分けて付ける。
    コントローラーの種類による。
    ターゲットベースのリグの場合は一緒に付ける。
    最初から唇の巻き込みなどは付けない。
  • 始めにパッと見て分かる表情を作成して後から細かい表情を付ける。
  • 目と眉のアニメーションを先に付ける。
  • クオリティのバラつきやキャラ崩れを防ぐために、
    作業者には使用するコントローラーを指定している。
  • 表情集、ポーズ集を基に表情を付ける。

<アニメーター(海外)>

  • 目で表情が決まると考えているので、
    ブロッキングの時点では目や眉毛の表情から付ける。
    最初は口は無視するが顎の開閉は付ける。

ブロッキングで付ける方が多いので、ブロッキング用に
コントローラーの数を減らしたLODを用意するとリグが軽くて良いかもしれません。

 

〘海外と日本ではどのような違いがありますか?〙

<アニメーター><リガー>

  • 個々のアニメーターさんとリガーさんとの間で直接の交流がほとんどない。
  • プロジェクト初期はアニムSVさんのやり取りは多いが、
    完成してからはほとんどやり取りがない。

<アニメーター(海外)>

  • 簡単なコントローラーの修正にも更新されるまで時間がかかる。
  • フェイシャルのアニメーションの工数は変更対応の予備日も含め、
    1ショット2週間くらい用意されている場合もある。
    細かい修正も多いので、1ショット完成させるまでにかなりの工数がかかる。
  • 実写やVFX系の案件では解剖学ベースで設計されているので、
    可動域から外れないようにリミットが設定されている。
    リミットを超えると破綻する。

リガー目線では、可動域以上に動かすと破綻することが多いので
リミットをかけたいですが、リミットをかけると嫌われます。。。

 

ご参加いただいた学生の方からご質問がありましたので、
議論枠の皆様にアドバイスをいただきました。

〘デモリールでフェイシャルリグはどのような見せ方が良いでしょうか
 またどのような機能があれば良いでしょうか

  • リグの機能を見るよりもアニメーションが付いた成果物を見たい。
  • 各コントローラーの機能よりも、
    顔の表情が豊かで自然に動いているほうがインパクトがある。
  • 表情のディテールが見たい。
  • 漫画、アニメ、ポスターなどのキャラクターの顔と同じ表情が付けられれば、
    コントローラーとしての機能性も証明できる。
  • 目的の表情があってコントローラーの機能を設定するので、目的とプロセスが見たい。
  • 学生の段階でリグの軽さは意識しなくても良い。

私も同意見で、各コントローラーを動かして機能を紹介する動画よりも、
表情豊かで自然に動いている方が説得力があると思います。
表情が付いている上でリグの機能紹介があると、より印象が良いです。

 

〘学生のうちにしておくとよいことはありますか?

  • 数学と行列を勉強しておいてほしい。
  • 今でも数学を勉強し直しているので、時間があるなら数学を勉強しておいた方がよい。
  • 観察力を鍛えるために絵心を付けてほしい。
  • 肩と腰を痛めやすいので筋トレをしておくとよい。
  • アニメーション作業をたくさん経験しておくとよい。
  • 筋肉に沿ったメッシュの流れなども経験しておくとよい。
  • コミュニケーション能力を高める。
  • 遊びも大事。

学生の時から、洞察力、観察力、好奇心を養うのは大事ですね。
コミュニケーション能力は必須なので、個人的には、グループワークも経験しておいて欲しいです。

 

フリートークでは上記の議題の他にも、

  • クォリティの差やキャラ崩れを防ぐには。
  • 日本でのアニメの誇張表現のリグの仕組み
  • FacewareとDynamixyz
  • ゲームでの目パチやリップシンクの自動化
  • アニメーション後のデータの受け渡し方法
  • 感情を表現するためのコントローラーの仕組みとレイヤー化

など様々な議論が行われました。

おわりに 

次回のリグナイトの開催日は、2021年3月12日(金)を予定しています。
次回のテーマは、『人型素体の骨の位置』となります。

画面共有で、実際に人型のモデルに骨を設定しつつ、位置や軸の議論ができればと思います。
応募方法につきましては、来週、弊社ウェブサイトにて告知いたします。
ぜひご参加くださいませ。

 

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