2022/11/21
第10回リグナイト『みんなで悩めば怖くない! ~骨打ち議論人型体編 その④~』~議論結果~
ご無沙汰しております。
BACKBONEの福本です。
今回は、
第10回リグナイト『みんなで悩めば怖くない! ~骨打ち議論人型体編 その④~』
の当日の様子をお伝えします。
リグナイトに関してはこちら。
リグナイト概要
第1回リグナイト『リガーアニメーター座談会その①』前編~議論結果~
第2回リグナイト『リガーアニメーター座談会その②』中編~議論結果~
第3回リグナイト『リガーアニメーター座談会その③』後編~議論結果~
第4回リグナイト『ゲームと映像のリグの違いその①』~議論結果~
第5回リグナイト『ゲームと映像のリグの違いその②』~議論結果~
第6回リグナイト『フェイシャルリグ ~リガーアニメーター座談会~』~議論結果~
第7回リグナイト『みんなで悩めば怖くない! ~骨打ち議論人型体編 その①~』~議論結果~
第8回リグナイト『みんなで悩めば怖くない!~骨うち議論人型体編 その②~』~議論結果~
第9回リグナイト『みんなで悩めば怖くない!~骨うち議論人型体編 その③~』~議論結果~
今回も前回に引き続き、Zoomでのオンライン開催となりました。
ご参加いただきました会社様の数は下記となります。
議論枠
<業種>
・映像:7社
・ゲーム:10社
・フリーランス:2名
<職種>
・リガー(TA/TD含む):19名
・モデラー:4名
・アニメーター:2名
・ジェネラリスト:1名
視聴枠
<業種>
・映像:5社
・ゲーム:20社
・フリーランス:3名
・その他:1名
・学校/教育:14名
<職種>
・リガー(TA/TD含む):13名
・モデラー:6名
・アニメーター:5名
・ジェネラリスト:2名
・その他:6名
・学生:14名
※以下の議論内容は、各テーマの「解」ではなく、皆さまの経験談に基づく「ご意見」となります。
前半 『骨の位置・数・軸(肘、手首)』
前回と同様にMayaの画面を共有しながら、Mayaでの実践を交えて骨の位置について議論しました。
〘肘を曲げたモデルに対する骨打ち〙
- 肘は5度くらい曲げてモデリングしている。
指も少しだけ曲げたリラックスポーズでモデリングしている。 - スカルプト時は、肘を曲げたリラックスポーズ(Aポーズ)でモデリングしたい。
- 演出的に肘をきれいに見せたいキャラは肘を曲げて作ってほしい。
- フォトリアルなアセットであれば少し曲げている方が良いかもしれない。(多数)
そうでなければまっすぐで良い。 - ゲームの観点では結局IKで制御するので、肘の回転の有無はどちらでもよい。
- 肘を曲げたモデルは骨打ちしにくいと感じる。
昔はTポーズで肘も真っすぐの状態が主流だったが、肩の形状を保つためにAポーズで肘も少し曲がっている事が多い。
今後もリラックスポーズで骨を打つことは増えると思う。 - アニメ映像を制作することが多いが、Tポーズで肘はまっすぐな状態で作成している。
Tポーズで腕が真っすぐの状態にしておくと、アニメーションのコピーがしやすい。
肘を曲げた時の形状はポーズスペースデフォメーションでスカルプトする。
腕を上げきるポーズもあるので、真ん中という意味でもTポーズがよい。 - Tポーズになるアニメーションキーを設定しておき、工程によってTポーズとAポーズを使い分けている。
大量のアセットが登場する場合は「アニメーションの流用」を想定する必要がありますね。
ポーズを合わせておくと、共通モーションの流用やアニメーションリマッチなどで恩恵を受けます。
〘肘のキャリーアングル〙
- 特に女性アセットはモデルの肘が反る場合がある。
- 反った状態で骨を配置すると骨の軸がずれるので、反りは加味せず骨を設定する。
- 場合によってはモデルを修正してもらう。
- モデラーさんのこだわりと相談が必要。
- モデルを作り直すことが多いと思う。(多数)
若干ディティールが落ちるがそこまで気にならない。 - 3Dスキャンモデルでは、上腕が湾曲していたり上腕から手首にかけて真っすぐな形状ではないことが多い。IKが設定できないのでモデルを修正することが多い。
- IKが複雑になるので肘の軸は1軸のみにしたい。(多数)
- モデルで角度がついていても骨は1軸で設定する。
程度によるが、少しだけの角度であれば形状を変更せずに骨を設定する。
ツイスト処理時にデフォームが若干崩れるが、やむなし。 - 動物のアセットはキャリングアングルどころではなく、しっかり角度がついたりしているので別の対応が必要になる。
3Dスキャンモデルの形状はリアルそのものですが、IKなどのCG特有の問題も考慮する必要があるのでモデルとリグ(骨)の整合性を保つのが難しいですね。
〘腕のツイスト骨の階層〙
《 直列(チェーン状)の階層派 》
- 腕をぐにゃっとしたゴムのような表現をしたいときは、ツイスト用の骨をチェーン状に配置していると便利。
- ツイストの回転成分は各骨に分散させている。
- 上腕、前腕で別々のチェーンを設定している。
- ベース骨もバインド骨も全て直列骨で設定しているが、リアルタイム案件では処理が難しくなることがあるので、並列骨でも設定できるようにして出力用途に応じて対応している。
- キャプチャーを使用する際はアニメーションをコントローラにベイクする。
- Unreal Engineだとチェーン状の配置は難しい。
- Blender内で完結する場合はチェーン状で作成することが多い。
スケールの継承も比較的手軽に設定できる。
《並列の階層派 》
- ぐにゃっとしたゴムのような表現は、ツイスト用の骨を並列に配置していてもナーブスやカーブで実現できる。
- チェーン状だとリアルタイム系では処理が難しくなるので並列に配置している。
- ツイストなどの補助骨は、モーション用の骨と処理を分けたいので並列にしている。(多数)
- 筋肉の表現にツイスト骨のスケールを使用したい場合、チェーン状だと子階層骨へのスケールの影響を考慮する必要があるので並列で設定している。
あくまでも今回参加された方のご意見ですが、やはりネックはスケールのようです。
前半は上記の議題の他にも、前回の内容を振り返りつつ、
「ロボットのヒンジ関節や骨の軸」
「手首のリラックスポーズ」
「マーベラスデザイナー用のモデル」
「ファニーボーンの再現」
について議論しました。
後半 『骨の位置・数・軸(指)』
〘各指の位置と軸の考え方〙
《 位置 》
- 映像案件では、形状の中心に骨を配置して形状のディテールは補助骨で対応している。(多数)
- ゲーム案件では、レギュレーションの問題があるので外側寄りに配置している。(多数)
- 形状の中心に配置すると、関節を曲げた時の形状が緩くなりがち。
メリハリのついた形にする場合は、外側寄りに配置する方が経験上良い印象がある。 - 形状の中心寄りに配置すると、曲げた時に隙間ができることがある。
- 若干、手の外側寄りに配置すると、曲げた時に肉厚がみちっとする。
- 指の根元から先端まで真っすぐに骨を配置する。
- 形状の向きに合わせて骨を配置する。
- 手を握った際に、親指と人差し指の間に隙間が出来ないように注意して位置を決める。
隙間が出来る場合はモデラーさんに相談する。 - ゲーム案件でも、格闘ゲーム等の手が重要な案件では、形状の中心に骨を配置して補助骨も設定する。
- 各指の長さに対しては、若干根本側に配置する。また形状のエッジに合わせて1度骨を配置する。
手を握らせて隙間が出来たり、長さのバランスが悪い場合は、エッジの位置を無視して解剖学に沿った位置に配置して確認する。その上でモデラーさんに相談する。(多数)
《 軸 》
- モデルの向きや爪の向きに合わせて骨の軸を決める。(多数)
- 親指以外の4本はモデルの形状に合わせて、指が1軸で曲がるように設定する。
指を全選択して曲げた際にしっかり握れなくても、
最終的にはアニメーションで微調整するので何となく握れれば良い。 - しっかりと手を握らせるには1軸のみの回転では難しい。
アニメータさんの要望があればY軸を曲げただけで手を握れるように軸を設定するが、なければリアルに寄せていく。 - 骨の軸合わせにモデルを修正してもらうかはケースバイケース。
- 手の平のデフォルトポーズはモデルによって軸が違ってしまうと、
ケースバイケースで何がベストなのかわかりにくい。
なのでリグ合わせにモデリングをしてもらう。
指は4本平行、爪は真上(親指は真下)に向ける。
リアルでは出来ないポーズだが、指の長さ調節がしやすく、
アニメーション的には正しい握りこぶしの比率を求めやすい。
モデルでの約束事が明確のため、作り手は指のねじれや軸の向き等を迷わなくて済む。
業界的には特殊だと思っているが結果が良いのでこの方法で行っている。
親指を下に向けて設定する手法はとても興味深いですね。
参加者の皆さまも興味津々のようで、頷かれている方も多かったです。
〘親指〙
《 中手骨の位置と軸 》
- 親指の中手骨をツイストした際のデフォーム処理が難しい。
- 親指付け根の部分が表現できて手の平という感じがするため、
映像として映ることは少ないが、こだわりとして付け根部分を作りたい。 - 外側に回した際のデフォームを綺麗に見せるために、少し外側に配置している。
- 内側に回した際の母指球のデフォームを表現するためために、内側(親指の付け根側)に配置する。(多数)
- 親指の先と小指の先をくっ付けた際に、親指の付け根(母指球)が痩せると見た目が悪い。
痩せる箇所の表情を意識して配置する。
- 格闘ゲームの場合、母指球が小さいと手が小さく弱く見えてしまうので母指球を大きく作成する。
ロボットも同様に、母指球を大きくするとシルエットが大きく見える。
親指を内側に曲げた時のシルエットが作れるか否かで軸を考える。 - 骨を外側に配置してしまうと、回した際に生命線側がへこんでしまう。
そのため内側寄りに配置せざるを得ない。
手の厚みから見て真ん中寄りに配置する。 - 親指の付け根部分には2つの骨を設定している。
1つ目は、手首の向きに平行な軸の骨。
2つ目は、親指の基節骨と末節骨と同様に内側に曲がる軸の骨。
2つ目の骨の位置は親指のボリュームの中心部分、軸は曲げた際のシルエットやボリュームを見ながら調整する。
私も昔は外側に配置していましたが、ディレクターさんに母指球の表現を指摘されたことがあり、それ以降は内側に配置するようになりました。
〘人差し指~小指〙
《 中手骨の数・位置と軸 》
- 親指以外の指の付け根にそれぞれ骨を配置している。(多数)
- 中手骨を削る場合、中指の基節骨の根元から薬指と小指に並列で骨を配置して、中指を起点として薬指と小指の制御をしている。ウェイト調整も楽。
これはPS3やXbox360等、少し前のゲームの構造なので現在はここまで削らなくても良いと考えている。 - 現在はケースバイケースではあるが、潤沢に骨を使って良い場合は削らずに各指に設定している。
レギュレーションの都合上で中手骨を入れない場合、手の甲のアーチ状の表現は、小指や薬指の基節骨を移動させて表現するか妥協するかのどちらかになる。 - 今の時代、中手骨を削ることはしない。
一つ前の世代では、小指の中手骨を薬指の中手骨と共有していた。 - 中手骨のウェイトが甘いことが多い。
- アニメーターさんは小指側を内側に少し曲げたリラックスなポーズをとることが多い。
少なくとも親指と小指の付け根部分はウェイトをしっかり調整していないと表現が厳しくなる。
手を握る時にも中手骨はとても重要ですね。
レギュレーションを意識しなくて良い映像案件では設定されていることが多いと思います。
他にも、
「指の補助骨」
「モデルの修正依頼」
「モデラーさんの作業範囲」
等の話題で盛り上がりました。
『フリータイム』
ご参加いただいた学生の方からご質問がありましたので、議論枠の皆様にアドバイスをいただきました。
〘アニメーターを目指していますが、知っておいた方が良いリグに関する知識はありますか。〙
- コンストレイントを扱えると良い。
- FK・IKやポールベクター、コンストレイント等の一般的な名称や機能は知っていると良い。
- Mayaは英語版を推奨。
- 言葉や絵等で自分が求めていることを相手に伝えられると良い。
- 会社ごとに方言があるため、分からない単語があればその都度確認すると良い。
- DCCツール毎に方言があるので、分からない単語があればその都度確認すると良い。
- なぜその軸で動くのか等、表示されているアトリビュートに関する知識があると良い。
- 「マヤ道!!」を読みましょう!
- etc…
〘制作しているデータが重いのですがどうすればよいでしょうか。〙
- Profilerで重い処理を探してみましょう。
- データが良く落ちるのであればEvaluationToolkitのGPUOverrideのチェックを外してみる。
- 重いと推測される箇所を削除しデータが軽くなるかを検証しつつ原因を解明していく。
- デフォーマーを多用するとデータが重くなる。
- 学生の時はあまりデータの重さは気にしなくて良い。
- etc…
上記以外にも、
「参考書に記載されていないような知識はどのように得るのでしょうか」
といったご質問へのアドバイスなどがされていました。
おわりに
リグナイトを開催してから、早くも約4年が経ちまして今回で10回目を迎えました。
私自身、リグナイトを通して沢山の方々と出会えて多くの学びや刺激があり、皆さまと意見交換や交流が出来たことをとても嬉しく、また有難く感じています。
今後もCG業界のリグを盛り上げるべく、定期的(目標年に3回)にリグナイトを開催して参ります。
引き続きご参加、ご協力いただけますと幸いです。
次回のリグナイト(『第10.5回リグナイト』)は、12/14(水)に開催いたします。
節目ということもあり、これまでとは少し趣向を変えて『フリートーク忘年会』のテーマで進行する予定です。
過去にご返答いただいたアンケートの『リグで悩まれている事』『議論したい事』『お聞きしたい事』の中から、最も多かったご意見をもとにフリートークで進めます。
今回は私も一参加者として、フリートークを楽しみたいと思います!
カオスな状況になっても、忘年会ということで^^。
※第10.5回リグナイトの詳細につきましては、今週中にBACKBONEウェブサイトにて告知いたします。
ではまた。
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